あとがき 
裏表紙(地雷也)
 野尻湖をはじめ、北信五岳にかこまれた信濃町。この恵まれた自然と人情にはぐくまれて、多くの民話がうまれ、母から子へ、子から孫へと語りつがれてきました。
 私たちも幼いころは、雪の夜長に母や祖母から、また嫁いでからは姑から、その土地にまつわる民話をきくことができました。
 戦後、核家族化がすすむにつれ、そうしたことの機会が次第にうすれて、このままだと、ふるさとの宝である民話も、風化するおそれがあります。
 ところで、私たちの「かたかご童話会」は、黒姫童話館で開催された「童話実作入門教室」の第一期生が中心となって、子どもたちに童話の読み聞かせボランティアをしょうと、平成六年五月に山にかたくりの花(古語ではかたかご)のさくころ発足しました。
 その後、町内の小学校・保育園などで、読みきかせの活動をしておりましたが、子どもたちが民話に大変興味をもっていることを知り、その子供たちのひとみの輝きにゆり動かされ、この町にも民話集があったらと思うようになりました。「そうだ、私たちの手で信濃町の民話をまとめよう。」ーそれは夢のような話でしたが、ともかく、それぞれのみじかなところから民話あつめをはじめめたのです。
 折りしも今年は、町制施行四十周年の年とうかがい、この記念に刊行できたならと、町当局にお願いしましたところ、ご理解をいただくこととなり、私たちの民話採集活動にはずみがついたのです。
 この民話は、信濃町に語りつがれたものをあつめたものです。
 地域の先輩の方々をお訪ねし、直接お話をおききしました。なつかしそうに、ぽつりぽつりと語られるそのお姿に、ふるさとへの深い愛情を感じたのです。
 また、大切な資料なども拝借し、本当にありがとうございました。
 編集にあたりましては、おおまかでありますが、太古から昭和へと、時代順に配列しました。文体も作品それぞれの味わいを考え、統一しませんでした。なお、固有の地名をもたないニ話は”昔話”とし、伝説と区別しました。 
 編集しながら、「黒姫」にまつわる話にしても、幾とおりもの伝承のあることを知り、さりげない小さな話に、いのちへのいつくしみを発見するなど、胸がわくわくする思いでした。
 遠くこの町をはなれて住む人たちにも、この町でそだちつつある子どもたちにも、この本がこころのふるさととして、役立てていただくことができたならとねがっております。
 この本の出版にあたり、町当局には、格段のご支援をいただきました。また、前黒姫童話館長高橋忠治先生には、監修者として、私たちのために、こころあたたまる御指導をいただきました。原稿の書き方に始まり、手とり足とり教えていただきました。
 大隈泰男先生には、民話のもつふくよかさ、おおらかさ、つつしみぶかさ、そしてユーモアもたっぷりと表現していただき、このうえもない喜びであります。
 おせわになった皆さま方に、こころから御礼申し上げます。

               平成八年九月一日  かたかご童話会代表 黒田ゆり子
前ページ
もくじ