ことばあさん 黒田ゆり子
おらあ ちさいころはなあ、秋になっていねこきがおわり、うすひきがすむと、夕はんは、毎ばんのように、しいなっ粉のおだんごなんだよ。
そば粉のおだんごは、まあまあすべらかでいいが、しいなっ粉のおだんごは、こそぼっこくて、えごくてまずいんだよ。
かくべつ小さな子供たちには、きらいな食べものの一つで、おだんごがのどをいったりきたりしたもんだ。
そんなとき、いつもおっかさんが、
「はやく食べねえと、ことばあさんがくるぞ。」

っていうんだよ。
すると、そばにいるばばさんまでもがまたいうのさ。
「ことばあさんはな、冬になるとやくし山から腹へらかしておりてきて、障子のあなから、子供がいい子になっているかどうか見てあるいて、
『おだんご食べたか たべねか』つていうぞ。『食べた』っていえば、
『そうか そうか』って言って山へ帰るが、
『まだ食べね』っていえば、
『そんなら手をだせ、うまいもんをくれる』っ言って、手をだせばその手をひっこぬいて持っていってしまうんだぞ。
やだ やだ さあ、はやく食べろ。」
子どもたちは、そのはなしをきいて、あわてておだんごをほおばったもんだ。