おこんとおひら 小林浩子
むかし、熊倉に目の不自由なお婆さんがおった。毎日どうしたものかと思い悩んでいると、ある日のこと、それも目をわずらっている近くのお婆さんがやってきて、
「柏原に金刀比羅さんがあるだ、そこへでもいってお参りしてきたら、目にいいんじゃねえかい。おらたちの目の病も、なおしてくださるでねえかい。」
と話した。
お婆さんは、しばらくだまっていたが、
「おらの名はこん、おめさんの名はひらだったのう。二人合わせりゃ、こんぴらだったのう。」
と言った。
「そうじゃ、そうじゃ。ながいこと生きておったのに、なんして気がつかねかったんかなあ。」
二人は、めずらしく大声で笑った。
つぎの日、さっそく、おこん婆さんと、おひら婆さんはつれだってでかけた。
それからというもの、お婆さんたちの住んでいる熊倉からは、一里ほどもある柏原の金刀比羅さんへ、二人は根気よく通いつづけた。金刀比羅さんの入り口には、桜の花が咲き小鳥がさえずっていた。
おこん婆さんが風邪で寝こんだりして行かれない日は、おひら婆さんが、「よし、おれが行って二人分のお参りしてくる。」と、さっさとでかけてくれた。
おひら婆さんの行かれない日には、おこん婆さんが出かける。
こうして冬がすぎ桜の花が咲き始めたころ、なんとも不思議に、二人の婆さんの目がはっきりと見えるようになってきた。
「これは、まことに金刀比羅さんの御利益じゃ。」
と、子どもみたいによろこんだそうな。