浄専坊の宝剣 長原慶子
むかし、仁之倉村の五輪堂に浄専坊というお坊さんがおりなしてな。
あるとき、七日七夜、大雨が降り続いて、黒姫山のなかほどがくずれだしたんだって。
そのために、仁之倉村が押し流されてしまうんではないかと、村の衆はみんな気にやんでおった。
すると、浄専坊さんが、はげしい雷雨の中にお立ちになって、宝剣をふりかざし、神に祈りながら、黒姫山にむかって一心不乱に空中をはらったんだって。
そしたら、空をおおっていた黒雲がはらわれ、雨もやみ、ぎりぎりのところで仁之倉村は流されずにすんだんだって。
そこで、村の衆が神と浄専坊さんの威力をたたえて、その宝剣を神社に納めてうやうやしくまつったんだそうだ。
だけど、川中島の合戦があった時、仁之倉村でも兵火があってな、そのどさくさにまぎれて、だいじな宝剣は行方不明になってしまっただと。
ほんとうに、おしいことをしたもんさ。
浄専坊さんも、その時、高井郡にお移りになって、浄照寺というお寺をお建てになったんだそうな。
