ひょうたんと弁天さま 黒田ゆり子
むかしむかし、大むかしな。
野尻のあるお大尽のいえに、それはうつくしい娘がおった。
あるとき、父さんとふたりで池ばたをさんぽしていたら、波の上に、ぷかり、ぷかりと何かながれてきた。
「おい、あれはなんじゃ、ひょうたんのようにみえるが、娘よおまえひろってこい。」
むすめがひろいあげてみると、きれいにみがかれたひょうたんで、くちもとはひもでむすんであった。
ひょうたんの中には、黄金色の水が入っていて、とてもいいにおいがするので、お大尽がひとくち飲んでみたら、うまーいお酒であった。
家のものはとてもよろこんで、しんるいじゅうの人をよんで、さっそくこの酒をみんなに飲んでもらった。
そうしたところ、つぎの日、りっぱな若者がたずねたきて、
「きのうは、わたしの酒をみなさんで飲んでいただき、ありがとうございます。
つきましては、おたくのむすめさんをいただきにあがりました。」
といった。 びっくりした親たちは、
「それはこまる。」
と、反対したが、むすめはその若者を一目みるなり、すっかり好きになってしまった。
そして、みんなの反対をふりきって、若者につれそって、さっさと島へいってしまった。
それからいくつきかすぎたある日、娘はお産をするといって帰ってきたが、母親に、
「ぜったい見てはいけない。」といって、自分の部屋に入って、 しつかり戸をしめてしまった。
みるなといわれれば、見たくなるのが親ごころ、そっとのぞいてみておどろいた。
天井までとどくような大蛇がいるではないか。
見てはいけないものを見られたむすめは、おどろく母親をしり目に、さっさと島へかえってしまった。
そしてむすめは、弁天さまになったという話じゃが、一年に一度だけ今でも里帰りなさるそうだ。
それが八月二十七日・八日の、弁天さまのおまつりなのかもよ。