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普光寺の大仏様

 「行って来やした」年の頃十六、七の娘おさよです。
 「悪いなあ、朝早くから俺のために」おじいさんが奥からつぶやきます。
 おさよは、病気で寝たきりのおじいさんのために、毎日、朝露を踏みながら、お寺参リをしているのです。
 「となんのばあさんは、昨日拝まっしやったそうだ。よっぽど早くなければだめなんだ。」甘党寺の大仏様が托鉢姿で歩かれるという。その姿にお逢いし、お願いして、おじいさんの病気をなおしてもらおうと、お参りしているのです。
 おさよが、おじいさんの看病を始めてから八年、その間に病弱な母もなくし、女手だけで畑仕事までしています。
 寝るまもおしんで働くおさよは、村でも評判の孝行者なのです。
 今日も鐘山の畑で仕事をし、一休みしていると、ふだんの疲れからか、ついうとうととしてしまいました。
 「はっ」として見ると、大きな体でほほえみかける托鉢姿の大仏様が見おろしておられるではあれませんか。
 「じいやんの、じいやんの足を・・・」おさよは、おじいさんの足の病気をなおしてくださいと、お願いしようとしますが、声が出ません。
 「おさよ、おさよ」目がさめたのは、となりのおばあさんの声ででした。
 「おさよ、じいやんの足が、足が立ったぞ」
 「ええ!」
 急いで家に帰ると、おじいさんは自分で立ったものの、これが自分の足かとおどろいています。
 おさよはさっそくお礼に、お寺に出かけました。ところが、本堂の大仏様を見てびっくりしました。
 立った姿の大仏様の足が切れて、すわった姿の大仏様になっていたのです。
 そして、やさしくほほえんだお顔は、苦しみをこらえたお顔に変わっていたのでした。

作・さみず民話研究会
採集地・普光寺

長野県 長野地方事務所 長野広域行政組合刊 長野地域民話集昔々あるところより
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