陣屋稲荷
慶長三年(一五九八年)、中野村の白井政寿は伊勢参宮の帰り路、山城の国は伏見稲荷社に参詣した。
春の夕暮れ、社殿の庭には梅の花が咲き、よい香りが匂っていた。政寿は、社前に膝まづいて熱心に析っていたが、旅の疲れからそこで眠ってしまった。
すると、どこからともなく品の良い美しい女性が、二匹の白狐を連れてあらわれた。そして「起きよ、起きよ。我、汝と共に信州に行かん」と言った。 政寿は、ハッと我に返り、あたりを見たが誰もいなかった。これはきっと、宇毛智之命が夢枕にお立ちになったに相違ないと喜んだ。翌日、朝早く御霊代を拝受して中野に帰り、自宅の東北に祀った。
享保九年(一七二四年)、それが中野陣屋に祀られた。明治三年に中野県庁が設けられ、その年の中野騒動によって焼失。やがて再建されて、現在は中日野神社に合祀されてい
(ふるさとの伝説と昔話)
