猿むこ 二
昔、信濃の国の山里に一人の猟師がいた。冬のある日、山へ狩りに出かけたが、吹雪になり目も暮れ始め困っていると、猿が出てきて猟師に「来い、来い」と手招きした。
猿のお陰で命拾いした猟師は、お礼に何か欲しいか聞くと、猿は「娘さんをお嫁にください」と言った。家に帰り、娘のおきくに一部始終を話した。すると、気持ちのやさしいおきくは、猿のところへ嫁入りすることを承知した。 春になり、お土産に餅を持って里帰りすることになった。猿が、餅の入った臼を背負い途中まで来ると、桜が満開に咲いていた。おきくは、桜の枝を父に持っていきたいと猿に頼むと、臼を背負ったまま桜の木に登った。重みで枝は折れ、猿は下を流れていた大きな川に落ちて流され、姿はどこにも見えなくなった。
それからというもの、桜の木の根元で供養を続けた。そして、この桜の木の花が二つ並んで咲くので、子持ち桜と呼ぶようになったと言う。
(ふるさとの伝説と昔話)
