入学のころ
昭和7年4月1日、待ちに待った入学式が済んだ。受持の山川先生は紫の袴に白い足袋。いつも和服姿だった。
私たちも和服のえしょ(着物)、靴下代わりの足袋、ワラのゾウリ。足袋や履物の大きさは「文(もん)」という単位だった。大人の男性は10文半ぐらいが平均だったようだ。1年生の私は7文半ぐらいだった。懐中には鼻紙として新聞紙をたたんで入れていた。
男子は丸坊主頭。学生帽は必ずかぶっていた(冬は毛糸帽か、めっきり帽、耳下まで覆うことができるスキー帽など)。
女子は一束にして後頭部で結ぶか丸めていた。女子の帽子はなかった。
防寒具はマント、ケットが主。雨具は番傘。ほかに遠足用に油の紙があった。
隙間のある床板。立て付けの悪い障子の戸。
すぐ近くに便所があるので、その臭いも容赦なく入りこんできた。うす暗い教室。しかし、誰一人それを不満に思う者はいない。2人掛けの長椅子。先輩たちが使いふるしたふたの真っ黒い2人用の机。はじめて見る同級生の顔、顔。借りてきた猫のようにみんな一様におとなしかったなあ。